2016年度 第5回経営者交流会レポート

平成28年8月9日(火)、「フードビジネス業界における人材育成のあり方~若者に“仕事のやりがい”をどのように伝え、次世代を担うリーダーを育てるのか~」をテーマに第5回経営者交流会を開催しました。

 

<第一部 講演>

関西大学社会学部の片桐新自教授より、「ゆとり世代の育て方~大学生調査25年のデータをもとに~」と題してご講演いただきました。

片桐新自教授
今、大学生はまじめになり、大学は就職予備校へと変化。
一般に2002年度からの教育内容の削減を元に、平成元(1989)年度生まれ以降の世代をゆとり世代と呼んでいます。ですが、その少し上の世代もあまり変わらないと考える人も多いため、現在の20代はほぼゆとり世代と位置づけられるでしょう。
私は、人育ての基本はどの時代も変わらず、相手の能力、性格を的確に見極めて適切な課題とアドバイスを与えることに尽きると思っています。能力や性格は人それぞれですが、考え方や行動のベースとなる価値観は時代の流れの中で作られているため、時代の流れを読むことで多数派の価値観を捉えることができます。
1987年から5年おきに大学生を対象に調査していますが、昨今、まじめな大学生が増加し、大学も就職予備校化へと変化しています。アンケートで、授業に「よく出席する」と答えた学生は1992年から2012年までに倍近く増え(※参照グラフ「出席度の変化」)、大学入学の目的も「就職のため」が最も多くなっています(※参照グラフ「大学入学目的の変化」)。高校時代の生活に、アルバイトが加わったくらいの生活をする大学生がとても多い。そのため、そのまじめさは高校生的なまじめさという感じがします。「できれば子どもでいたい」と考える学生が増えているのも、その現れでしょう。

スマホ等が普及する一方で、若者の社会への関心が減っている。
今の若者の状況として、「広がるメディアの世界が若者の世界を狭める」ことを認識する必要があると思います。スマホなど便利な道具があるにも関わらず、学生の社会関心は減っています。新聞を読まなくなり、多くの学生はテレビ欄すら見ていません。
「パソコンでニュースを読む」割合を調べたところ、2007年と2012年ではほとんど変わらず、むしろ少し下がり気味。しかも2010年頃にスマートフォンが普及したことによって、学生のパソコン離れが加速し、最近ではレポート作成時しかパソコンを使わないという状態になっています。
一方、スマートフォンの普及により「スマホ(携帯)でニュースを読む」学生は増えました。ただ、見出しだけでなく中身まで読む学生は少なく、しかも見出しも覚えていないのが現状です。(※参照グラフ「ネットでニュースを読む」)
結局、学生は便利なメディアもSNSやゲームなどにしか使っていません。むしろSNSのやり取りで時間を取られて、読書など他に関心を向ける時間的・精神的余裕をなくしているといえます。

何かができる人間より仲間の多い人が魅力的と考える。
今の学生にとって、友達関係が重要性を増してきています。かつては、大学時代に自分のアイデンティティを確立しようと努力したと思いますが、今は「何かができる人間」「何かを知っている人間」はあまり評価されません。政治でも趣味でも、知識を持っていることがあまりプラスに作用されないのです。
今は、友達の多い学生を魅力的だと考えるため、男子学生もよく群れる傾向にあります。意味もなく一緒にいて楽しくやっているように見せている部分もあるのではないでしょうか。
親友の数を尋ねた質問に対して、特に男子学生の伸びが顕著です。以前は5人くらいが平均でしたが、2007年、2012年には一気に7人を越えています。(※参照グラフ「親友数(男女別平均値)」)
かつて電話と手紙しか通信手段がなく、コミュニケーションが取りにくかった時代は、それほど多くの人間と頻繁に会えないため、親友の数が限られていました。ところが、今はSNSで何十人もの人間とつながることも容易です。SNSで、よくやり取りする人間を親友と考えると、必然的に多くなる。最近は、友達の多さを重要視する男子学生が増えてきています。

親分肌の上司を好み、出世より安定を求める若者たち。
次に大学生の仕事観について。好む上司のタイプは、少し無理な仕事もさせるが面倒見のいい親分肌の上司。様々な項目で学生の価値観は変化していますが、この項目に対する回答傾向は今も昔も変わっていません。(※参照グラフ「好む上司のタイプ」)
出世意欲は、非常に弱いのが特徴です。バブル後以降、安定を求める傾向があり、「しんどくないところで、そこそこの給料をもらえる」ことを良しとする傾向にあります。リスクを伴う挑戦を避け、安定した生活を過ごしたいという思いがあるのです。仕事と余暇のバランスを尋ねた質問でも、仕事中心に考える学生は少なく、余暇中心やワークライフバランスを重視したいという調査結果も出ています。(※参照グラフ「出世意欲と勤労意欲」)

景気の悪い状況が続く中、転職に対しても消極的。
転職に関する考え方も大きく変化しました。1997年には「転職はすべきではない」と答えた学生は男女合わせ1/3以下でしたが、その後どんどん増え、2012年には半分以上の学生が転職すべきではないと考えています。(※参照グラフ「転職すべきではないと思う割合」
1987年に「働きたい時に働き、遊びたい時に思いっきり遊ぶ」フリーアルバイター的な人生がかっこいいと、リクルート社が打ち出しました。簡単に仕事が見つかると思っていた時代ですから、転職への抵抗は少なかったと思います。
ところが、1997年には山一証券や北海道拓殖銀行の倒産もあり、景気の悪い時代が続く中で、若者の中で転職すべきでないという意識志向に変化しました。その後、少し景気がよくなった際にはリーマンショックが起こり、結局、学生の意識は戻らず、安定した潰れない会社に行き、終身雇用と年功序列を求める。これが今の若者の理想となっています。

早く、効率的に、目に見える形で結果を求める。
次に育て方にもつながる話として、タテマエでは動かない若者が重視するFEV基準についてお話しします。FEV基準とは、私が作った言葉で、Fast(早く)、Efficient(効率的に)、Visible(目に見える形での結果)の頭文字を合わせたもの。これらの3項目を満たせば、若者は非常にやる気を見せますが、短期間のうちに結果が表れないことには、積極的に取り組もうとしません。
ある程度の世代から上は、すぐに結果が出なくても、タテマエで動きましたが、今の若者は長期的視点をほとんど持たないので、結果がすぐに見えるかどうかをより重視します。
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若者が興味を示す、「すぐに結果を得るもの」。
ボランティアの意志について尋ねた質問を見ると、災害ボランティアは非常に伸びています。災害ボランティアは、例えば大雨の後などに1度行って片付けをすれば済みますし、ありがとうと言ってもらえます。それに対して福祉ボランティア、は1度では済まず、ある程度長期になるので、災害ボランティアほど簡単には関われないと考え、若者たちに二の足を踏ませます。
ボランティア活動は、1回、1日でもがんばれば、自分の行動の結果がわかりやすい形で目に見えて戻ってくる。そのことが、若者に「ボランティアはやりがいがある」と思わせる一要因ではないかと思います。(※参照グラフ「ボランティアの意思」)
投票意欲も同様です。市町村長選挙、市町村議会選挙、都道府県知事選挙、都道府県議会選挙、参議院選挙、衆議院選挙という6つの選挙に関して、投票意欲を尋ねています。国政選挙の投票意欲が一番高くてもいいように思いますが、学生の場合は市町村長や都道府県知事選挙が上位になっています。これは、自分の投票した人が、決定権を持つ市長や知事になるからで、自分の1票で○○さんを当選させたと、非常にわかりやすい形で自分の行動の結果が見えるからです。それが投票意欲の違いとして表れたと考えています。(※参照グラフ「投票意欲」)

アイデンティティ確立のために他者の感謝・確認を求めている。
「電車やバスでお年寄りや体の不自由な人に席を譲るか」という問いに対しても、非常に多くの学生が譲ると答えています。席を譲ると「ありがとう」と言ってもらえる。これも、自分の行動の結果がすぐ見えるということです。
自分に何ができるかを明確に掴めない中で、自分の存在感にある種の空虚感を覚えたり、自分の存在に何の意味があるのだろうかとふと考えてしまう。そういう時にボランティアなどをすると、「あ、何かいいことをした」と感じられるわけです。
友達も一緒です。SNSに書き込むと友達がコメントをくれる。自分の存在が友達によって確認されるから自分の存在が空虚じゃなくなる。おそらく、それが友達とつながっていたい一番大きな理由になっていると思います。誰かに感謝されたり確認されることによって、自らのアイデンティティを作ろうとしているのでしょう。

大きな夢や目標よりも和やかな毎日を送りたい。
私は「不透明社会の若者たち」などと表現しますが、まさにその通りだと学生からもいわれます。先がよく見えない、でも今は何か楽しいと思っている学生が多いんですね。
生活目標を尋ねた項目の変化が非常にわかりやすいと思うのですが、着実に伸びているのが「身近な人たちと和やかな毎日を送る」という回答です。(※参照グラフ「生活目標」)大地震や大津波で全てを無くすような被害があったことも、学生の無常観を増したかもしれません。先が見えない中で計画を立て豊かな生活を築くのはもう無理かもしれない、と。それなら、その日その日を楽しく過ごす方がいいという志向になってきています。今の生活への満足感が高いことから、より現在を重視する傾向になるわけです。(※参照グラフ「現在の生活への満足度」)
また、結婚意欲も非常に高くなっています。結婚して子どもを2人ぐらい作って、家かマンションでも買って小型犬でも飼って…という生活ができたらいいかなと考えているのですね。学生に夢や目標を聞くと、皆困った顔をします。非常に悩んで、「結婚して子どもを持って…」といった程度の答えしか出てきません。

従順なゆとり世代に対してはこちらから懐を開くことが大切。
ゆとり世代は、とても優しい子が多いと思います。そして、従順で、打たれ弱く、批判精神も弱い。世界が小さく、発想力も乏しい。一方で、意外に最近の若者は人間的なつき合いを求めています。
こうしたことから、ゆとり世代の育て方としては、まず愛情をちゃんと伝えること。愛情が伝われば、厳しい言葉も受け止められると思います。知識が少なく発想力が乏しいので、「すべてイチから考えなさい」という方法は難しいでしょう。適切に課題を与え、適切なアドバイスを加えることが大切です。こんな発想・分析もあると少し教えることによって伸ばしていく。昔のように自分で伸びなさいといっても伸びません。手取り足取りが必要になりますが、多少つけあがる傾向があるので、甘くせずに厳しくやる。ただ、その厳しさの背景に愛情があると伝わることが大切です。
そういう意味では、こちらから懐を開いて見せることが今の若者たちにとっては有効です。先生や上司がお高く留まって偉そうにしていると、まず育たないだろうと思います。

第2部 ディスカッション

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