2015年度 第4回経営者交流会レポート

平成28年3月4日(金)に、ケルク交流会の経営者交流会を開催しました。
今回は、「取り巻く経営環境から見た、今年度の振返りと今後のフードビジネス業界の展望」をテーマに、講演や意見交換が行われました。

 

-講 演-

テーマ:取材現場から見える日本経済・世界経済
講師:経済政策シンクタンク ハーベイロードジャパン副代表 内田 裕子 氏

内田裕子氏に、「取材現場から見える日本経済・世界経済」と題し、今の中国経済の実態や、TPPやIoTによって、日本がどのような変化を遂げるのかなど、ご講演いただきました。

バブル崩壊の兆しか?オピニオンが語る中国の現状

uchida
今の経営・経済の中で、食ビジネスにも関わりの深い話題として、まず中国についてお話ししたいと思います。
私には、非常に信頼できる中国経済のオピニオンがいます。1980年代から中国ビジネス界で活躍され、後に家族も呼び寄せて上海で起業された方です。そんな方が昨年11月、私どもの事務所に来て「もう中国に見切りをつけた。中国のビジネスをすべて片づけて日本に帰ってきた」と話しました。中国ビジネスにすべてを賭けてきたような方が、中国の経済や政治には出口が見えないというのです。
彼によると、海外に送金するルートが、地下ルートも含めて、徹底的に封鎖されているとのことでした。もちろん、周金平氏の反腐敗キャンペーンの一貫ですが、それだけではない部分が見えてきたと話しています。それは、バブル崩壊です。

送金ルート封鎖をはじめ、中国政府の施策が逆効果に

バブル崩壊で本当に恐ろしいのは、キャピタルフライトです。その国からお金が一斉に逃げ出していく。これが決定打になります。
中国は日本のバブル崩壊を研究しているので、最後にとどめを刺されるのがキャピタルフライトだとわかっています。そこでキャピタルフライトさせなければいいと考えて海外への送金ルートを封鎖したのですが、これはあまりにも短絡的です。世界の投資家はそう甘いものではありませんから、「そんなに中国経済はヤバいのか」と、逆に考えてしまいます。
さらには、株価を崩落させないようにサーキットブレーカー制度を入れたりもしました。こうした市場原理に背いたことを行っても、逆効果になるだけです。経済はアンコントーラブルだということが、ようやく中国共産党もわかってきたわけです。何もかんでも計画経済でコントロールできるものではないと、認識させられたといえます。

次のフェーズに進むために、中国に必要なこととは

経済がよくなっている時には、さまざまな矛盾を覆い隠しながらも成長していくものですが、一旦ダウントレンドに入り、水面がどんどん下がってくると、川底にある汚いもの・矛盾が見えてきます。
そして今問題になっているのが、国有企業です。共産党幹部が入り込んでいるファミリービジネス化して設けているような国有企業が多数ありますが、それらを民有化していく必要があります。さらに、金融の自由化、通貨「元」の国際化、株式市場の改革、情報開示など、徹底的な構造改革をしなければ、中国は次のフェーズに入れません。
ですが、私の中国のオピニオンは「中国は構造改革できないだろう」と見ています。なぜなら、どれにも中国共産党が関わっており、改革しようとする動きはすべて抵抗勢力になってしまうからです。このままの状態では内部分裂、内乱が起るだろうと話しています。

今、注目したいキーワードは、世の中の「変化」

もうひとつ、今日お伝えしたいキーワードは世の中の「変化」です。
世の中が変わってきているという実感はあると思いますが、皆さまの変化の認識はまだ緩いと思います。20世紀と21世紀は、まったく違う時代だと理解しなければいけません。
たとえば、19世紀と20世紀の違いを見てみましょう。日本では江戸時代から明治に向かう時代で、当然電気はありません。当時、江戸から京都まで2週間かかりました。ところが、20世紀になって電気が発明されると、東京から京都まで2時間15分で行けるようになりました。電気の発明によって本質的な変化が起こり、時間の概念、時間の価値が変わったのです。20世紀には、人類は月まで行きましたから。想像もしなかったイノベーションが、19世紀と20世紀との間で起こっているわけです。
「ここまで進化したのだから、これ以上便利にならないだろう」と思ってしまいそうですが、そんなことはありません。同様の変化が、20世紀と21世紀でも起こります。それは、今までの価値や常識、幸せを真っ向から否定するようなイノベーションです。そうしたダイナミックな価値の転換、価値の変化が起こると認識しているかどうかによって、経営はまったく変わると思います。

フリートレードによって第三の開国が起こる

何が今までの常識を覆すのか。ひとつのキーワードは自由貿易、フリートレードです。TPPやFTAをはじめ、21世紀はフリートレードという流れにどんどん突き進んでいきます。自分たちの持つノウハウやリソースが強みを発揮させる方法を本気で考えないといけません。
TPPは第三の開国といわれています。第一の開国はペリー来航。第二の開国は終戦。戦後、日本はイチからやり直して奇跡の復興を遂げ、高度経済成長を迎えました。秩序からすべてが壊れた時に発揮するその底力は、比類なきものだと思います。日本というものの独自性でしょうか。あまり豊になりすぎると、日本人の良さが失われるような気がします。
そして、第三の開国がTPP。歴史に学ぶとするならば、TPPをきっかけに日本は気合が入り、ちょっと良い方向に向かうのではないかと思いますし、そうならなければいけないと思います。

日本の食を海外展開するためのインフラは整っている

たとえば、食関連の海外展開に関していえば、今、沖縄国際物流ハブに注目が集まっています。夕方に日本海のノドグロや青森の活ホタテなどを積んで沖縄へ向かい、夜中のうちに沖縄の空港を飛び立つと朝にはバンコクや香港、台北、上海などに着きます。香港では、前日に青森で獲れた活ホタテをランチタイムに食べられるのです。
こうしたことが物理的に可能になっています。日本の美味しいものを海外に展開していくインフラは整ったわけです。二ーズもあり、やらない手はないと思います。

スマホは、手の平サイズのスーパーコンピューター

もうひとつ、20世紀と21世紀の大きな違いにICT、IoTがあります。
皆さまがお持ちのスマートフォンは、実は70年代80年代のスーパーコンピューターよりスペックが高いのです。今や手の平サイズのスーパーコンピューター時代といえます。「よくわからない」などと投げ出していてはいけません。
パソコンは、マイクロソフトが1995年にWindows95を出してから一般に広がりました。小さな時から家にコンピューターがある世代をデジタルネイティブと呼びますが、彼らは今25、6歳。私たちとはまったく違う人種で、スマートフォンでも取扱説明書を見なくてもパッと使いこなします。
彼らがスマートフォンで行うことは思い出づくりやSNSでのコミュニケーションであり、申し込みも買い物も健康管理もスマートフォンです。食べたものを写真に撮ってカロリー計算するなど、食の世界にもジワジワとITが入ってきています。

10年後、デジタルネイティブが社会を動かす時代に

あと10年も経つと、こうしたデジタルネイティブが35歳くらいになり、メーカーの商品開発や企画といった部署で活躍して、ビジネスを先導する時代になります。思考回路もすべてデジタルの人たちがビジネスの先端に来るのです。そういう時代に、デジタルネイティブの話す言葉がわからないのでは厳しいと思います。
今なら、まだ間に合います。皆さまのビジネスの中で、スマートフォンをいかに活用するかを考えてみてはいかがでしょうか。
これからは、スマートフォンを通して情報を入手し、スマートフォンで情報を発信する社会になります。お得な情報はもちろん、安全情報も同様です。スマートフォンを持っている人は、緊急事態時の速報もリアルタイムで入手できます。スマートフォンの有無による情報格差は、生活の格差以上に大きくなってくると思います。

ICT、IoTが進む21世紀は、人間性の概念が変わる

19世紀と20世紀では時間の概念が変わったとお話ししましたが、20世紀と21世紀では人間性という概念が変わると思っています。
ICT、IoTが進むと、動くものすべてがインターネットに接続され、情報が吸い上げられて、ビッグデータで解析されることになります。すると、人間性の概念が大きく変わります。なぜなら、全部個別だとわかるからです。
千差万別、十人十色という言葉はありますが、これまでデータで立証されたことはありませんでした。ところが、IoTの時代になって日々のデータが吸い上げられると、データとしてもみんなが違うことが立証されるのです。多様性どころではなく、みんなが違うとわかるため、人間とは、男性とは、女性とは…という分類がばかばかしくなると思います。

IoT社会では、従来のマスマーケティングは通用しない

今、電通が性別に関する面白いダイバーシティプロジェクトを行っています。
それによると、人間の性を男性と女性の2種類に分けるのは20世紀の方法で、今や性別は12あるといいます。戸籍上の男・女、心の性としての男・女、そして恋愛対象として男・女・両方。2×2×3で12種類。たとえば、「戸籍上は男性だけど心は女性、でも好きになる人は男性」など。そうなると、その人のことを「男性」といいきれなくなります。
21世紀の人間がおかしなことになっているわけではなく、人間というものはそもそも複雑でデリケートなものなのです。ただ、今までのマーケティングでは、男、女、主婦…などと強引に分類されてきただけで、大量消費の中ではそう括る方が楽だったからでしょう。
そうしたことも、IoTが進むとだんだん表に現れてきて、マスマーケティングが意味を成さなくなると思います。

第2部 ディスカッション

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