外食産業にも波紋! まずは知ってほしい糖質制限食

2013年4月5日

ケルククラブのドクターズキッチン研究会では、医療、食、更に農業などの異分野の業界に横串を入れて産業を創造することを趣旨としております。本レポートでは参考事例のひとつとして、糖質制限食についてのインタビューをまとめました。

「糖質制限食」は、「糖質の量を減らし、代わりに脂質とタンパク質は多めに摂って、合計のカロリーはある程度維持する食事療法」です。「糖質」とは炭水化物のうち食物繊維を除いたものです。
糖質の摂取量を少なくすることで毎食後の血糖値の上昇を抑え、糖尿病改善やダイエット効果、その他の体質改善などの効果があると言われています。
糖質制限食ダイエットのブームにより、糖質制限食の需要は少しずつ増えつつあります。料理界、食品業界はすでに動き始めています。

飲食店がそうした需要に対応したメニューを開発する場合には、糖尿病改善やダイエット等の健康効果を謳う上で、医師や管理栄養士など医療関係者との連携は有効な選択肢となります。

事実、糖質制限食の飲食店は、東京以外では京都、千葉、名古屋、沖縄などに偏在しており、各地で糖質制限食を広めている核になる研究者の存在が見て取れます。

今回は、千葉エリアで糖質制限食メニューのある飲食店の誕生に深くかかわっておられる、宗田マタニティクリニック院長の宗田哲男氏をお招きしてお話を伺いました。

更に、糖質制限食のユーザー目線から、自らも1型糖尿病で糖質制限食を実践しながら、周囲にもその食事法を広めていらっしゃる、健康コンサルタントの加藤理香氏にもお話を伺いました。

また、糖質制限食に対応した食品を製造販売しているメーカー2社(ソイコム株式会社、株式会社小樽フィッシャーマンズキッチン)からもお話を伺いました。

 

(1)宗田マタニティクリニック 院長 宗田哲男氏

■現代人の糖質の過剰摂取と糖尿病

実は、糖質(炭水化物)はヒト本来の主食ではないんです。人間はウシやウマなどの草食動物より、トラやライオンなどの肉食動物に近い生き物です。ウシやウマが草を消化できるのは、複数の胃の中に特別なバクテリアがいて草を分解してくれるからですが、人間にはそんなことはできません。

農業はずっと昔から続いていて、お米を食べるのは普通のように思われていますが、人類の700万年という長い歴史と比べると、お米を作るようになったのは弥生時代からのごく短い期間でしかないんです。そして、近代になって更に糖質をたくさん食べるようになった結果として糖尿病患者が激増しているわけです。

血糖値を上昇させ、多量のインスリンを分泌させ、糖尿病を引き起こす原因となるのは、脂質ではなく糖質です。ある栄養学の専門誌では、「脂肪の多い食事は大量のインスリンを分泌させ(中略)糖尿病を急増させた」のように書かれていることがありますが、これは明らかな間違いです。

ペットボトル症候群というわかりやすい例があります。2Lのペットボトル飲料に100~150gの糖質が入っていたりしますが、これを飲みすぎて血糖値が1300ぐらいになって病院に運び込まれるケースがあります。こういったペットボトル飲料には脂質は入っていませんよね。

糖尿病学会が糖尿病治療食として推奨している、脂肪を少なくした、炭水化物:タンパク質:脂肪=6:2:2の食事では、糖質が多すぎます。

透析患者がここ25年間で急激に増えています。しかも、腎臓病による透析患者は減っているのに、糖尿病による透析患者が直線的に増えているんです。ここ25年間続けてきている従来の糖尿病治療に効果はあるのでしょうか。

また、有名な「久山町研究」という研究報告があります。8000人の町を対象に、亡くなった方の総数の99%について解剖まで行って研究をしているものです。この町の人々は従来の炭水化物60%というバランスを真面目に守った食生活をしていたわけですが、皮肉なことに全国平均と比較して逆に糖尿病患者が増えてしまったというものです。

仮にこの食事を糖質を抑えた食事に換えて実験を行えば糖尿病患者が激減するだろうと思います。

ごはんやパンは口から入って首から下に行ったら砂糖と同じです。こういう表現を栄養学で教えてくれるようになるといいですね。

 

私たちは、糖質制限の安全を確かめるためにいろいろと実験をしています。「脂肪が血糖値を上げる」と言われている仮説を検証するために、我々は脂肪負荷試験ということも実際にやってみました。そうしたら、あたりまえですが血糖値は上がらないですよ。

CGMという装置で持続血糖測定を行うことができますが、糖質制限食をしている人の血糖値は真っ平らです。こんなデータはいままでの学会には出てきていないですね。上がった血糖値をインシュリンなどでどう下げるかという研究ばっかりしてますからね。

「日本の長寿村・短命村」という本の著者である近藤先生によると、白米を食べる村が糖尿病リスクが上がると発表しています。

血糖値上昇を抑えるために運動も効果はありますが、効果の程度を比較すると糖質制限食には全然かないません。私自身の例でも糖質制限食で空腹時血糖、HbA1c、γGTP、体重、内臓脂肪、皮下脂肪は明確に下がりました。

■産婦人科としての糖質制限食

埼玉県三郷市の永井クリニックの協力で、糖尿病の妊婦さんに「糖質制限食」を試してみました。

ある妊婦さんは、第一子の出産のときはカロリーを1500kcalに抑えた普通の「カロリー制限食」で、母親のHbA1cは6.6、体重は90kg、子供は4000gで産みました。「ひもじくて辛かった」って言ってましたよ。第二子のときに「糖質制限食」を取り入れて、毎日肉を食べてもらいました。HbA1cは5.7、体重81kgで子供は3300gで、申し分ない良好な出産でしたね。

 

もう1例は妊娠糖尿病の妊婦さんです。第一子のときは妊娠糖尿病に気付かずに、子供が3700gまで大きくなってしまって帝王切開で出産しました。第二子のときは、なんとか下から産みたいと希望されたので、糖質制限食で体重増加を抑えて、帝王切開せずに出産ができました。糖質制限食を行うと、脂質代謝産物である血中ケトン体が増えるのが特徴ですが、この方はケトン体が964という高い値に上がっていますが特に何の問題もありません。ケトン体の安全性については後程また説明します。

今の母子手帳には、1日にごはんを8杯も食べるように書いてあります。ごはん8杯の糖質量は角砂糖100個分と同じです。そうすると血糖値は130上がりますから空腹時100の人であればは230まで行ってしまいます。これが妊婦に対する今の栄養指導ですが、これでは妊婦さんが妊娠糖尿病になります。これらの妊娠糖尿病患者を100人追跡したある研究では、100人ともが出産後に糖尿病に移行したという報告が出ています。妊娠糖尿病の段階で見つけて対処すればその後の人生は違ったものになっていたと思います。

我々は臍帯血(へその緒の血液)のケトン体を測定するという研究もしています。糖質制限をしていない妊婦さんの臍帯血でもケトン体はかなり高いです。ケトン体が多いと危険だということが今は言われていますが、赤ちゃんはケトン体をエネルギーとして生きているということが証明できそうです。そうすると、ケトン体の安全性を証明することにもつながっていくと思います。

■糖質制限食と外食産業

いま、糖質制限食は世の中に広まっています。一番アクセスが多い江部先生のブログでは、述べ15000人の人がこれまでにアクセスしています。新橋の糖質制限中国料理の梅花(現在は梅華)では月に1回、「おやじダイエット部」という糖質制限している方々の集まりがあります。

私のクリニックの近所では、麺屋紅丸というラーメン店のマスターが糖尿病患者さんで、マスターのお父様も以前に糖尿病で亡くなっているのですが、たまたま私と知り合いだったので糖質制限食を奨めました。そうしたらソイコムさんの大豆麺を使ったり、店でも麺を工夫したりして大豆麺のつけ麺をメニュー化しました。私も食べてみましたが血糖値上昇は20とか30くらいです。糖質制限食ではラーメンは食べられないかと諦めていましたが、こんないいものができて嬉しいですね。

もうひとつ、我々のクリニックの近所では「ルッコラ」というイタリアンのお店があります。ここのシェフは元々我々のクリニックのシェフだった方で、お母様を糖尿病で亡くしています。ご本人は糖尿病ではないですがかなりの肥満でしたので、やはり私が糖質制限食を奨めたところ、お店でも低糖質のメニューを出すようになりました。

また、ある老舗のハンバーグ屋さんで、トリュフ・フォアグラ・フカヒレ・ハンバーグというメニューを出している店があるので、オニオンをアボカドに換えてもらって糖質制限食として売り出したらいいと思って働きかけています。このメニューをフェイスブックで紹介したら、「私は糖尿病で幸せです。こんなものが食べられるんですから」なんていうコメントが来たりもしていますね。カロリー制限を守っている人はこんなものを食べると叱られますが、糖質制限ならOKですからね。

■今後の糖質制限食について

妊娠糖尿病を糖質制限食で管理すると、その妊婦さんは糖尿病にならない食事方法を会得することになります。そうするとその家族の食習慣も変わる可能性がありますので、糖質制限食の普及による国民の健康増進としても、たいへん意義があると思います。

糖質制限食では、薬剤を使わないで糖尿病が管理できるようになりますので、栄養士、管理栄養士の役割が大きくなります。

「糖質制限食の短期的意義は認めても長期的には認められない」という意見もありますが、短期間でよくなるものが、長期で悪くなるなんてことがあるでしょうか。どんな病気でもまずは短期で良くならなければ意義がないと思います。いずれ、糖質を制限することの優位性と正当性は明らかになってきます。料理界、食品業界はすでに動き始めています。「医食同源」=「健康と食生活」は本来の人類の永遠のテーマですので、これを見据えていくことがますます大切になってきます。糖質制限食が今以上に普及するといいと思います。

宗田哲男氏 プロフィール
宗田マタニティクリニック 院長

千葉県市原市で開業している産婦人科医師。不妊治療、自然分娩、性教育とピルの普及をライフワークにしつつ、糖質制限食を実践中。糖尿病は改善し、肥満、高血圧、脂肪肝も解消した経歴を持つ。

 

(2)健康コンサルタント evergreen代表 加藤 理香氏
「糖質オフ実践者がこっそりやっている外食中食注文」

■糖質制限食ダイエットとインシュリンの関係

私は4歳のときに1型糖尿病になり、治療を続けています。2型糖尿病とは違って、1型糖尿病では糖質制限してもインシュリン注射がなくなるわけではないので、実は糖尿病治療目的というよりもはダイエット目的で糖質制限食を始めました。

他のダイエットをいろいろと試しても全然効果が得られなかったのに、糖質制限食だと簡単にするすると痩せることができたので、それ以来、周囲の人々にお勧めしています。

私は1型糖尿病なので、食後に血糖値を測って、その値と摂る糖質の量を参考にしてインシュリンの量を決めて注射を打ちます。

インシュリンは血糖値を下げるホルモンですが、言い換えると、余った糖質を体脂肪に換えるホルモンです。

今思えば、糖質制限食を始める前のここ数年は、食べる量が増えてインシュリン注射の量も増えていました。それで太ったのだなと、糖質制限食を理解した今ではわかります。

糖質制限食を始めると、以前に比べてインシュリンの使用料は5分の1くらいに減りました。それで体脂肪が減りダイエットに成功したというわけです。

■糖質制限の食生活

はじめはお弁当を普通に買って、ご飯を捨てたりしていましたが、食材に申し訳ないのでコンビニで単品で買うようになりました。ワンコインでランチを揃えるべく、いろいろな組み合わせを日々考えています。最近一番よく食べるのはキャベツの千切りの上に鯖の水煮缶に生卵。職場の電子レンジでチンして食べています。これでも糖質量は10g以下、味噌汁を入れても15g以下ですね。ちなみに味噌煮缶だと糖質も多いし味も濃すぎるので水煮缶がいいんです。

外食で注文する際は、主食を換えてもらいますが、おかずの糖質はある程度はOKにしています。

砂糖が入っているかどうかわからない時は、お店の方に必ず聞くようにしています。また、主食系の食材は他のものに変更することができるかを必ず聞きます。大手のチェーンだと難しいですが、個人店などだと応じてくれます。頼み方はシンプルに、「これとこれが食べられないので何か他のものに換えてくれませんか」がいいみたいです。

「糖質制限をしているので」と言ってしまうと、お店側が必要以上に気を利かせて調味料などを全部カットしてしまい、料理が貧相になってしまい全然美味しくない、ということもあります。

糖質制限食を始めてから、イタリアンの店にはほとんど行かなくなりました。パスタやピザ生地など、糖質オフの食材を使う店があれば行きます。

糖質制限している人も、みんなと同じで楽しく気持ちよく美味しく、お互いに笑顔で満足して食事ができるように、広まっていくといいなと思います。スーパーなど小売店に糖質制限食専門の棚ができれば、知らない人にも広まりやすくなると思います。

加藤 理香氏プロフィール
健康コンサルタント evergreen代表

ダイエットのために糖質制限を始めて1年ほど。それまで運動をしてもカロリー制限をしても痩せなかった自分自身がラクにスムーズに痩せた糖質制限の効果と理論に感銘。現在医療従事者として15年以上医療に携わってきた経験も活かし、周りの方たちに広める活動を行っている。

 

(3)ソイコム株式会社 代表取締役社長 是安 義徳氏

■糖質制限食と大豆

糖質制限食では、小麦粉や米など糖質の多いものに変わる原料として、大豆全粒粉が有力です。弊社ではビゴーレ粉と呼んでいます。

大豆は臭み、エグ味があり、これまでは発酵食品など特定の食べ方しかされてこなかったという背景があります。弊社は特許技術により臭みのない大豆全粒粉の開発に成功し、美味しくて糖質の少ないクッキー、ドーナツ、パン、麺、マヨネーズなどの製造が実現しました。しかも全粒粉なので産業廃棄物もゼロの工場です。

大豆全粒粉は小麦粉に比べて、糖質が7分の1、タンパク質は5倍、食物繊維、ミネラル、ビタミンも豊富です。

各種の栄養素を豊富に含んでいる大豆全粒粉の食品は、美味しいサプリメントを摂っているような、しかも糖質制限できる食品となります。

美味しくて栄養のある糖質制限食品として、肥満対策、生活習慣病対策、アレルギー対策として、国との関係の中で進めております。

是安義徳氏 プロフィール

ソイコム株式会社 代表取締役社長
薬学や生化学また医学関連の世界にいた経験から、食生活が要因の生活習慣病は薬品や医学的治療では解決できず、食べ物でしか解決できないことを体験する。食べ物が人の健康を決める原点であるとの認識から、大豆全粒粉を原料にした今までにない大豆食品の研究を行い“おいしい”大豆の糖質制限食品を開発した。低等質でありながら高タンパク質で栄養の豊富な大豆の糖質制限食品の機能性と有用性の解説や普及を通して健康貢献事業に取り組んでいる。

ソイコム株式会社
http://soycom.co.jp/
 大豆専科ソイコム

 

(4)株式会社小樽フィッシャーマンズキッチン 菊地 創太氏

当社では糖質制限メニューの中でも、特に主食代用品に力を入れており、パン(ふすまや大豆ベース)やライス(当社商標登録商品の豆富米)、大豆粉ピザ等を提供しております。

このような当社食品類は独自の特許取得冷凍技術を使用し、鮮度や風味を落とす事無く高品質な状態でお届けしております。

また、当社では糖質制限のメニュー開発の技術提供やPB商品の提供も行なっており実績として日本南極地域観測隊の健康食提供を始め、一般企業のヘルシー社食企画、スポーツジムやフィットネスのダイエットプログラム企画としてオリジナル糖質制限食をご提供しております。

当社の糖質制限食はメニューバリエーションがバラエティ豊かで、目にも美味しい、香りも美味しい、勿論、味も美味しいという唯一の健康食として食して頂いており、お客様には大変喜ばれております。

菊地 創太氏 プロフィール
販売促進事業本部 販売促進部 新規事業グループ 主任

株式会社小樽フィッシャーマンズキッチン
http://www.ofk-jp.com/ おたる糖質制限キッチン(糖質制限食ECサイト)
『糖質制限』の認知度がなかった2008年より、専門医療機関の監修の元、全ての食品製造メーカーに先駆けて冷凍糖質制限食の開発、販売を開始。業界に先駆け専用の大規模生産工場を設け、素材研究・メニュー開発とその製造を行っている。

(コーディネート、記事作成)
新産業文化創出研究所 小林祐太

「ローカーボ・パラダイス小林」と名乗り、美味しく楽しく糖質制限食を実践中