話題のデパ地下 大丸東京店の「見せる厨房」

2013年4月5日

2012年10月5日、売り場面積を1.4倍に拡大し、「新しく」「大きく」なった大丸東京店。地下食品売り場もお弁当コーナーの「お弁当ストリート」や「お肉の細道」、スイーツコーナーの「デパイチスイーツ」や「デパチカスイーツ」など、五感を刺激する、臨場感あふれる売り場になって生まれ変わりました。

全長60メートルの「お弁当ストリート」では、東京の老舗弁当ブランドや築地の新名物弁当など合計23店舗が軒を連ねます。その手前の「お肉の細道」では、男性をメインターゲットに、お肉を使用したお弁当ゾーンができました。スイーツコーナーでは東京下町のお菓子など、東京屈指の菓子ブランドが立ち並び、毎日来ても飽きない売り場へと変身。

今回の改装の大きな特徴の一つに、「見せる厨房」ということがあります。実演して見せる、厨房の中での作業工程を見せることによって、活気ある売り場が実現しました。

この「見せる厨房」の取組みによって、百貨店、ショップ、そしてお客様にも色々な変化があったと言います。今回は大丸東京店 営業3部 グロッサリー・生鮮三品・ベーカリー担当マネージャーの渡邉博文氏に取材をさせていただき、その辺りの詳しいお話しを伺いました。

大丸東京店 営業3部 

グロッサリー・生鮮三品・ベーカリー担当マネージャー

渡邉 博文氏

渡邊氏からは、ショップへ向けて「今までの業態からもう一歩踏み出し、百貨店を新しい販路として、共に新しい可能性へ向かって挑戦いただけることを願っています」という言葉で締めくくられました。

取材後、実際に地下食品店売り場に出店されている『牛たん かねざき』、『パパブブレ』にもコメントをいただきました。

 

改装にあたってのコンセプト作り ~土地柄、客層、そして店長の思い

東京駅付近は、時代により環境の移り変わりの激しい場所です。周りにはJRさんも高島屋百貨店さんも頑張っておられますし、そのような中でいかにお客様に喜んでいただくか、大丸東京店でしかできない工夫が必要でした。

お客層としては、近隣にお住まいの方に加え、東京駅という場所柄、お勤めの方や出張の方の割合も非常に大きく、お弁当需要や、東京ならではの商品、あるいは観光ついでに時間つぶしをされる方なども多くいらっしゃいます。

このような状況の中で、店長の藤野がよく口にする言葉があります。「国際空港みたいな百貨店にしたい」。これは、お客さまが国際空港にいる時のように、東京で流行っているものはとりあえず大丸東京店へ来れば揃っている、時間が余っていれば見るところも楽しむところもたくさんある、そんな場所をイメージした言葉です。

今回のオープンにあたっては、これらを反映してコンセプトを作りました。

  その1.お弁当需要に応えた改装

お弁当売り場を一か所にまとめて、特にお肉のお弁当を充実させました。現在、大丸東京店地下にはメインの通路が二つあります。そのうちの一つ、JRから続く通路は、「ドル箱」などという呼び方が出てくるほど、昔から人通りの非常に多い通路です。今回の改装ではその通路に面した所まで売り場面積を広げ、そこにお弁当コーナーを作りました。

駅からでてきたお客様が、匂いや調理人のパフォーマンスに吸い込まれるように入っていただけるように、一番手前にはお肉のお弁当を買うことのできる「お肉の細道」。その道を入っていただくと、右左に作られた各店舗の大きなガラス窓から、調理している姿をご覧いただくことができます。

お弁当コーナーの反対側には、OLのランチ需要に応え、ヘルシーメニューなども取りそろえています。

  その2.東京ならでは、が手に入る!!

ショップ選びにもこだわりました。お肉であればどこが流行っているだろうとリサーチし、ショップとして入っていただけるように交渉しました。他の出店をお断りになったようなショップでも、作っているところを見ていただけ、目の前ですぐに渡すことができる、ということで共感していただき、出店を決めていただいた所もあります。

スイーツなどは、東京の下町を感じられるようなショップを選びました。百貨店では小さなお店に出店していただくことはあまりないのですが、名物になるようなものを作りたいということもあり、お声掛けをしました。

東京ばなななどの定番のお土産もそろえています。このような定番土産はすぐに見つけていただけるように、入口に近い場所に出店していただいています。東京ばななさんには、大丸と空港でしか手に入らないオリジナルの「キリン柄」商品も作っていただいています。

  その3.見せる厨房

今回の改装では、お客様に厨房の中が見え、作っているところを見せる、ということにもこだわりました。ガラス張りにすることによって、躍動感もあって、なおかつ見ていただいて時間つぶしにもなる「見せる厨房」をたくさん作りました。

お客さんに見せたいのは、ただお弁当にお惣菜を詰めるシーンだけではありません。お肉を焼いてるところや、オムライスを作ってるところなどを実際にお客様に見ていただくことができるようにしました。注文をいただいてから作るので、多少時間をいただくことになりますが、今ではお客様の「行列してでも食べたい」とか、「欲しい」という気持ちに繋がってきています。

ハンバーグや牛タンを焼いているガラス越しには、お子様のほか、意外と男性のお客様がじーっと見ていらっしゃることも多く、長く見ていただくことによって購買につながっています。

スイーツコーナーでも、作る工程を見ることのできる店舗に出店いただき、毎日多くのお客様が立ち止まって楽しみながら買い物をしていただいていいます。

 

オープンして新しい流れができた大丸東京店!!

大丸東京店オープンと同時期に、東京駅も新しくなりました。その影響もあるのか、以前より観光、旅行で立ち寄られるお客様が増えました。東京駅を見て、大丸の食品を見て、帰る、というような一つの流れもでき、それに伴って、「お弁当をお土産として買って帰る」という、一つのブームみたいなものも生まれました。

期待していた以上に「大丸東京店のお弁当」の認知度が上がっており、皆様、ちょっと待ってでも買って帰ってくれます。普通はお土産といったらお菓子が多いですが、店舗さんにもご協力いただき、年末なども敢えて「お弁当」という切り口で勝負をしていただきました。

その成果もあり、一つ一万円近くする高いお弁当をみんなでシェアして食べていただいたり、沢山お土産として買って帰られる方も増えました。大丸の土産というよりは、東京土産として購入されるイメージだと思います。例え地方で同じものを売っていても、東京で、ここで、買うことに意味があるようです。

 

厨房を見せたことによる効果は?

敢えて厨房を見せることによって、明らかに良い効果が生まれました。

  その1. きれいな厨房、そして安心安全な食品をお届けできる

厨房を見せることによって、私達の巡回中のチェックポイントは間違いなく増えました。特にお客様視点で目に入るところに注意を払っています。私達は百貨店であり、百貨店としての質がいつも求められています。その期待へ応える必要があります。

今までも売り場に厨房はありましたが、ガラス張りではありませんでした。ガラス張りにしてからは、全てが見えてしまうので、何気ない動作や行動も、外から見ると衛生的でなかったり、美しくなかったりします。

百貨店に出すのが初めてのショップからすると、細かいことを指摘されるので最初は驚かれるかもしれませんが、「きれいである」ということは、お客様に安心感を与えることでもあるので、ご理解をいただいています。従業員が厨房内で休憩するも今はありません。

また、保健所からも毎週こまめにチェックが入ります。お客さんの目も厳しく、厨房のドアが開けっぱなしになっていたりすると、注意されたりもします。ちゃんと手袋をしているか、なども(笑)。

常に気がひきしまる環境ではあります。しかし、お客様の健康に直接かかわることなので、我々も、そしてショップ側も、最終的には消費者のことを考えた必要事項であると考えています。

  その2.従業員のモチベーション

コックさんにとっては、見られるということが一つのステージであり、より良いサービスへとつながっているようです。笑顔が増え、お客様へも積極的に声をかけたり、売るための様々な工夫を自らするようになったと聞いています。

飴屋のパパブブレさんなどは、渋谷、中野、横浜に店を構えていらっしゃいますが、それらの店舗は駅から少し離れているので大勢の方に来ていただくのは難しい環境でしたが、東京駅に来てからは、毎日色々なお客様が長い時間見てくれるので、スタッフの方もやりがいを感じて仕事をしていただくようになったそうです。

 

店舗が出店するまでの流れ  ~期間、売り場づくり、販売予測、新しい商品作り

今回のこのような大掛かりな改装がある場合、おおよそ2年間の準備期間があります。最初の1年でコンセプトや内容を決めていきます。

残りの1年でようやくショップ探しに入り、少しずつ話を詰めていきます。ショップには、お店でやりたい商品を出してもらい、それに伴って設置する厨房設備などを、大丸側の什器、デザイン、施設、電気などのそれぞれの専門家と、できる、できないを含めて話し合います。

大丸の経験値による販売予測数などもアドバイスし、売り場内で用意する個数、CKなど他所で作って持ち込む個数などの摺合せを行います。この時期であれば何時に何個ぐらい売れるか、など、比較的詳細なアドバイスをすることができます。

レストランや商品の販売をメインの事業にされているところは、お弁当販売の経験が少ない場合があります。そのような場合はこの出店を機に、お弁当にしても美味しく食べられるための工夫・研究などをしていただきました。牛たんのかねざきさんの場合、笹かまぼこが有名ですが、今回はお弁当ということで、焼いても冷めてもおいしい牛たんを研究されました。元々厚切りがメインで販売されていましたが、1mm単位で試行錯誤し、検討されたそうです。このような工夫は、どのショップでもしていただいたと思います。

 

安全第一!! デパ地下の厨房設備

出店していただくにあたって、とても大切なのが、どのような厨房設備を設置していただくかということです。大丸東京店には、一部のレストランはガス厨房のところもありますが、基本的にどこも電化厨房を前提でお願いしています。使い勝手、安全面、掃除しやすさ、涼しさなどを考えると、電化厨房が優れています。大丸東京店は通常でも10万人くらいのご来店があります。イベント時は多いときで17、8万人位ご来場されるので、火災や事故など、何かあったら大変なことになります。

ショップによっては、料理品目によっては重たい装備を持って来たいというところもあります。しかし百貨店内は電気容量も決まっていますし、また厨房面積も決まっています。狭い面積に色々詰め込んでしまうと、作業動線が確保できない、というような場合もでてきます。

また、限られた空間なので、涼しさを保つためにも電化厨房が良いですね。

ショップの方は、ショッピングセンター等に入った経験のある場合が多いので、基本的に厨房に関しても要領を心得ていますが、それでも思い切ったことを提案していらっしゃる場合があるので、保健所や消防署に確認しながら、慎重に進めています。

 

今後の大丸東京店

まだオープンしたばかりなので、もうしばらくはこのような改装はありませんが、行う場合は食品売り場の様々なチームが時流にあったもの、ニーズにあったものを考えながら決めていきます。

まずは、いろいろなものがあるんだよ、ということを知っていただくことが大切だと思っています。また、飽きずに来ていただくために、イベントなど色々こまめに仕掛けていきたいと思っています。

また、店長藤野の思いにもありますように、国際空港のような百貨店を目指して外貨の取り扱い、韓国語や中国語、英語の対応などを含めて外国人向けの対応も今後は強化していく予定です。

 

外食産業などのみなさんへのメッセージ

外食産業との関わり方は、レストランで出店していただいたり、地下の食品売り場へ出店していただいたりと色々あると思いますが、一緒に色々な可能性を探りながら何かを作っていくことが出来ればいいなと考えています。レストランの食事、お菓子や商品なども百貨店用のもの、お弁当、お土産商品などにお互いにアイデアを出しながら作っていくことで、新しい可能性が広がります。

今まではレストランだけしか考えていなかったような企業さんにも、是非飛び込んできていただきたいと思います。

百貨店には、特にこの大丸東京店には遠方からもご来店されるので、元々のお店の知名度や売り上げなどへもつながっているのではないかとも期待しています。

今までの業態からもう一歩踏み出し、百貨店を新しい販路として、共に新しい可能性へ向かって挑戦いただけることを願っています。

 

地下商品売り場の店舗インタビュー

★牛たん かねざき

   取扱い商品:厚切り牛たんステーキ弁当 1,480円

          仙台味噌 牛たん金胡麻めし 1,200円

          やわらか煮 牛たん重 1,050円

             ほか

お客さんに見られることに関していかがですか?

見られて緊張するということではないですね。お客様に見られるということは必要だと思います。対面で私たちが焼いていて、もともと買う気のなかったお客様が買って行って下さるというようなこともしばしばあります。

お弁当にして販売することで、工夫されたことはありますか。

お弁当用の牛タンということで、試行錯誤を重ねてきました。「柔らかい牛タン」ということをコンセプトにお弁当を作っているので、熟成させるために寝かせる日数であったり、寝かせる時に使う配合分量であったり、同じ配合であっても三日寝かすのか四日寝かすのかなど、色々試しました。その結果、今のこの商品ができあがりました。お肉は冷めたら固くなるというイメージが強いと思いますが、それを極力なくすっていうところに焦点をあてて商品を作ったので、冷めても柔らかくておいしいですよ。

★パパブブレ

取扱い商品:フルーツmixキャンディー(瓶入り) 700円

       フルーツmixキャンディー(袋入り) 450円

       ほか

 

この厨房では飴を作る工程が全て見られるようになっているのですね。お客様に見られるという事に関して、いかがですか?

見られることは好きですね。普通であれば工場とかで作っているのですが、ここでは何かやるたびに反応があるので楽しいです。普通だったら飴を流して、組み立てて終わるのでしょうが、見せるための技やパフォーマスもできて、ますます楽しくなってきています。動作なども自然に変わってきてるんですよ。

モチベーションもあがりますね。

見られていると気も抜けないですし、常にハイテンションで頑張ってます。そういうのが好きな人たちが集まっているので。やる気になって頑張っています。

見られているのはどういうお客さんが多いのでしょうか。

小さいお子さんも確かに多いのですが、おばあちゃんとかも見て行ってくれます。懐かしいと思っていただけるようです。若い人たちにとっては新しいことですし、両方の方から楽しいという声を聞くことができます。一回の工程が1時間くらいかかるんですが、長い人だと三回、四回ずっと見ています。三回、四回見られていると、話すことやパフォーマンスも色々変えていかなきゃならないけど、モチベーションがあがります。だんだんリピーターの方も増えてきています。

※取材にあたって、株式会社 大丸松坂屋百貨店 本社 営業企画室販売促進部 PR広報 齊藤 なおこ氏にご協力をいただきました。