外食や給食、中食産業とのコラボレーションに意欲的な機能性素材業界  ~「食品開発展2012」からの取材報告

2012年12月19日

「食品開発展2012」が10月3日~5日、東京ビックサイトで開催されました。機能性素材メーカーや受託企業の国内大手、有力企業が数多く出展し、540社、830小間が会場を埋め尽くしました。なんといっても注目の的は「美容」と「アクティブシニア」向け素材。市場への期待感を伺わせます。

出展企業へのヒアリングも行い、機能性素材メーカーが健康食品やサプリメントだけでなく治療食などの市場にも関心のあることがわかりました。また、フードサービス産業への期待として、共同開発など連携を図る機会がほしいという要望も聞かれました。医食農連携やドクターズキッチン構想において新たな業界との連携も見えてきました。

機能性素材とドクターズキッチン

機能性素材メーカーが一堂に会する国内最大の展示会が「食品開発展」。機能性素材に関しては、近年、美容やアンチエイジング、関節炎対策を中心としたエイジングケア訴求の素材として市場を牽引しています。また、一般食品のほか、医療・介護食への用途拡大も進んでおり、今後も市場の拡大は続くものとみられています。

一方、新しいビジネスの可能性としてケルククラブでも進めているドクターズキッチン構想。ドクターズキッチン構想は、科学的根拠に基づく食材やレシピの開発を、医師と栄養士、調理師などがコラボして開発し、病院やクリニックと外食や中食、給食産業が個人の健康データや食事指導の処方箋により、地域に配食する社会インフラを指します。この構想を進めるにあたり、食材や食品は欠かすことができません。

機能性素材はドクターズキッチンとしても注目すべき業界であると言えます。

「食品開発展2012」の報告 ~多いに盛り上がる会場

食品分野の研究や開発、品質保証、製造技術担当者向けの専門展示会としてスタートし、今年で23回を迎えます。出展企業は540社を超え、ブース総数は約830小間。来場者数は41,591人となりました。私達が訪れた展覧会最終日、ビジネススーツに身を包み展示ブースを巡る来場者、商談を行う出展者、外国人が英語で商談する姿も多く見かけました。

会場は、機能性素材や健康素材を集めた「Hi(Health Ingredients Japan)」と分析、計測、衛生資材、製造技術を集めた「S-tec(Safety and Technology Japan)」から構成。

出展品目は、大きく「機能性素材」「天然原材料」「食品添加物」「受託製造」の4種類に分かれます。

出展企業は味の素、エーザイフードケミカル、キューピー、タカラバイオ、旭化成ケミカルズ、協和発酵バイオなど大手企業がずらりと軒を並べて参加。地域産業振興として、北海道、青森、静岡、鳥取、島根など、都道府県単位の参加も目立ちました。また、もう一つの特徴として、日本市場に向けて広くPRを行おうと、海外からの参加も多数ありました。アメリカ、カナダ、中国、韓国、台湾など。主催のUSBメディア株式会社が発行する「健康産業新聞」によると、開催期間中、健食企業2000社が加盟する中国保険食品協会の視察団による日本商材の買い付けも実施されたとのこと。狙いは「酵素(植物発酵エキス)」と「納豆キナーゼ」だと言います。

国内市場を牽引する「美容」や「アンチエイジング」素材

展示会全体として、美容やアンチエイジング素材の提案を多く目にしました。美容・アンチエイジングとしてはブドウの果皮などに含まれる抗酸化物質として知られるレスペラトロールや、成長因子を含み美容や健康に良いとされる、動物由来、海洋性由来、植動やフルーツ由来のプラセンタも多く出品されました。最近特に注目されだしたのがロコモ素材です。「メタボ」や「認知症」と並び、深刻な国民病の一つとして数えられています。ロコモシンドロームとは加齢などに伴い、身体機能の低下や運動器疾患をおこすもので、今回の出品としては「骨」や「筋肉」、「関節」をケアする素材などでした。各社それぞれ機能性データを取り揃えて、プレゼンテーションが行われました。エイジングケアやロコモなどの受託試験受託機関の出展などもありました。

高齢者と女性マーケットの潜在成長力

このような提案が多い背景として、少子高齢化の影響を挙げることができます。

2010年の国税調査では1億2806万人だった人口は2048年には9913万人に減少すると予想されています。65歳以上の高齢化率も進んでいます。2010年の23%に対して、2060年には39.9%。高齢化が進むと高齢者特有の疾患への対応や疾患予防が求められるようになります。高齢化が進んでいるのは日本ばかりでなく、世界的な現象でもあります。

(出典:厚生労働省『平成24年版厚生労働白書』)
<http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/12/dl/1-06.pdf>

もう一つの要因として、平均寿命が延びていることが挙げられます。終戦直後から考えると30歳も伸びているとされる日本人の平均寿命は今後も延び続け、厚生労働省の外郭団体である国立社会保障・人口問題研究所によると女性は2060年には90.93歳に、男性が84.19歳に伸びると予測されています。国連が2004年に発表したレポートでは、2300年には女性108歳,男性104歳と更に大胆な予測を出しています。高齢化と共に、気力、体力の若返りのデータも示されています。

(出典:厚生労働省『平成24年版厚生労働白書』)
<http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/12/dl/1-06.pdf>

高齢化や平均寿命が延びることによる社会変化により、マーケットニーズの変化が予測できます。介護が必要な高齢者とともに健康なアクティブシニアも増えるわけですが、一般的な高齢者の生活スタイルや行動規範に併せた提案が未開拓であると言われています。女性の長寿により、女性がますます社会で活躍するということを前提としたマーケットもあるでしょう。

(出典:厚生労働省『平成24年版厚生労働白書』)
<http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/12/dl/1-06.pdf>

2012年8月28日厚生労働省から公表された「平成24年版厚生労働白書」では、このような背景を受け、企業による新産業創出、市場開拓が不可欠であることが示されています。

出展社からのヒアリング

会場の出展企業、機能性食品の原材料メーカーのご担当者にもヒアリング致しました。

株式会社エル・エスコーポレーション
広報情報部 部長 大澤 善嗣氏
(聞き手:新産業文化創出研究所 所長 廣常啓一)

株式会社エル・エスコーポレーションの大澤さんは、
「我々の会社は健康食品やサプリメントのメーカーとの取引だけでなく、健康や予防、または治療を食事で解決する市場に是非とも連携したいと考えています。」
とのこと。また、
「食事に機能が持たされることで、サプリメントなどの需要は減るのでは」
という質問に対しては、
「日々の生活の中の食事の段階で健康や予防を考える意識や食事や食材の機能の知識は、健康食品やサプリメントの機能を知っていただくことにもつながります。また毎日の食事をとることとの使い分けなどをより理解して頂き、食事との取り合わせ、薬との取り合わせなどの効果や逆効果などの問題解決、誤飲解決にも結び付くものと考えています」ということでした。

更に「フードサービス産業界に期待することはありますか」という質問には、
「機能性の食品原材料や加工食品が調理などにより、どういった食べやすいもの、美味しいものにできるかを共同で研究してみたいですね。また機能性メニューなどを給食などだけでなく外食や総菜などで食べる機会を作っていただけることが、我々の業界にとってはとても望ましいことと思います。例えば、発展して原材料をパスタの麺に配合する、調味料として活用する、デザートを作っていただくなどができると最高ですね。フードサービス産業界の皆様との連携の機会を作っていただけることができましたら、積極的に参加させていただきたいと思います。」というコメントをいただきました。

機能性食品開発のための原材料業界にとってもドクターズキッチン構想が進むことによりそのビジネス市場の拡大が見込まれます。新たな市場として病院給食や介護施設の給食、またそうしたサービス施設の食事の地域配食、さらに外食や中食のメニューにまで拡大することを期待するコメントを頂きました。