医師や栄養士と調理師が連携した食事メニュー、及び病院と連携した食事提供システム

2012年9月24日

『「健康な人々を増やすためには、まずは病院の職員食堂から・・・。」』

 

アンチエイジング(加齢制御)研究の第一人者、順天堂大学大学院 加齢制御医学講座教授で医学博士の白澤卓二先生、そして先生と一緒にメニュー開発を行われているダニエラ・シガさんにインタビューを行いました。白澤先生は「世界一受けたい授業」や「はなまるマーケット」などの人気テレビ番組出演、「100歳までキレイでいられる基礎知識101」など執筆活動も多数。年間50冊以上の健康と食に関する本を出版されています。ダニエラさんはルーマニアのご出身で、白澤先生のもと、順天堂大学大学院 加齢制御医学講座の協力研究員として健康的な長寿に関する調査や栄養士としてメニュー開発協力などされています。

(写真上)順天堂大学大学院 加齢制御医学講座
教授 医学博士 白澤卓二氏
 
 (写真下)順天堂大学大学院 加齢制御医学講座
協力研究員 料理研究家ダニエラ・シガ氏

 

今回は、医療と食分野の大きなビジネスの可能性として『ドクターズキッチン構想』を説く新産業文化創出研究所 所長の廣常啓一が聞き手となり、アンチエイジングのご研究に関することと、病院と連携した食の考え方について伺いました。医療行為にとどまらない、未病、予病としての病院の情報発信としての役割などにも話が広がりました。

 

「食」「運動」「生きがい」でアンチエイジング

廣常 早速ですが、アンチエイジングとはどのような概念で、どのような方向にむかっているのか簡単に説明してください。

白澤先生 アンチエイジングという言葉は元々アメリカの65歳以上の社会制度的なケアを必要とする人口を減少させようと国家的な取組みからはじまりました。アンチエイジングは「老化を防ごう」という考え方を指してり、老化のプロセスを逆戻りさせることではなく、少しでも細胞の老化プロセスを遅らせることで、心身の健康長寿を実現させようというものです。老化は、活性酸素により体が内側から酸化していくことで招かれます。近年では予防医学や美容医学だけでなく、化粧品、食品、フィットネスなど、益々その領域を拡大してきています。

廣常 順天堂大学大学院、加齢制御医学講座でそのようなご研究をされているのですね。

 

白澤先生 はい。高齢期の病気を予防することによって長寿を目指す「加齢制御学」の研究です。細胞の加齢を制御するには「食」「運動」「生きがい」の3つがキーワードだと考えています。外面的な「若返り」のみの追及や、単に寿命を伸ばすためのものではなく、食事・運動・精神といった生活習慣を重視し、健康長寿を実現するための予防医療領域の研究となります。今後の日本の医療費の削減のためにも、予防医療が重要となります。

廣常 アンチエイジングリーダー養成の取組み(ALCO:一般社団法人アンチエイジングリーダー養成機構)もされていることを伺いました。

白澤先生 はい。「食事」「運動」「生きがい」を三本柱としたシニアライフを充実させるための取組みです。抗加齢栄養学(認知症予防、骨粗しょう症、メタボ予防)の講座、運動、キャンプなどを行いますが、大きな反響をいただいています。それだけニーズがあるということだと考えています。

 

アンチエイジングと「食」

廣常 確かに重要で、ニーズも高いと思います。食によるアンチエイジングというキーワードが出ると特にテレビ番組や書籍も売れるというのがそのニーズの現れなのでしょうね。先生は老化予防となるような料理本もたくさん手がけられていますね。

 

白澤先生 最近出した本に「100歳までサビない生き方 体の中からキレイになれる101の習慣」という本を出しました。これが30代の若い女性に大変うけています。本にも書きましたが、「老けて見える」「若く見える人」の最大の違いは食生活にあります。特別なものを食べているとか、甘いものを全く食べないとかそういうことではなく、多くの食材をバランスよく摂ることが「若く見える人」に共通する基本だといえます。若い女性は「サビない」という言葉に反応しているようです。アンチエイジングと食とはきっても切り離せません。また、食だけではなく、生き方そのものも影響するようです。「自分で料理を作ろう」とか「運動をしよう」とか。老けない方法は、長生きの方法でもあるといえます。年間50冊以上、こうした関連の出版を行っています。食によるアンチエイジングのニーズを強く感じる次第です。
この他にも料理研究家でもあるダニエラさんと多くの共著を出版しています。


ポプラ社
100歳までサビない生き方〜体の中からキレイになれる101の習慣〜

 

ダニエラさん 私は特に健康ジュースに関する分野の担当をしています。栄養学の面からもきちんと考えた健康的なレシピを提供したいと考えています。

廣常 ダニエラさんが関わられた中ではどのような本の反響が大きいですか?

ダニエラさん お陰様でどれも大きいですが、多く読まれるものの中に『100歳までボケない がんにならない 101のジュース 決定版』などがあります。生の果物や野菜に含まれる「酵素」、そしてビタミン、ミネラル、食物繊維、フィットケミカルは体の免疫力と抗酸化力を高めてくれます。生で皮や茎、葉までたくさん摂れるジュースでの摂取はお勧めです。ジュースだけでなく、日常のクッキングに役立つ食材ごとに効果を記した食材辞典も併載しました。食事も飲み物も、美味しいことが肝心だと考えています。

新星出版社
100歳までボケない がんにならない101のジュース 決定版

 

 

医師や栄養士と調理師が連携した食事メニュー、及び病院と連携した食事供給システム(社会インフラ)

廣常 健康になれて美味しいということは大切なことです。今回の取材に入らせていただいたケルククラブで進めようとしている『ドクターズキッチン構想』研究会では、フードサービス産業との連携のほか、病院と医師や栄養士、料理人がコラボしたメニュー開発や、そのようなメニューに基づいた料理をレストランや中食惣菜店などで販売したり、家でも食べられるようにデリバリーのシステムを構築したりしていきます。新しいビジネス形態がどんどん広がっていきます。

白澤先生 とても大切なことです。群馬大学医学部附属病院の中に「イタリア食堂チネマ」と「カフェプランタン」がオープンしましたが、来店されるお客様には糖尿病はじめ生活習慣病の方も多く、多くの方にご利用いただいています。糖尿病は失明したり足が壊疽したりと、本当に恐い病気ですから、病院内にこのようなレストランやカフェが併設されるのはとても良いことだと思っています。どんどん増えればよいと思います。

 

廣常 素晴らしい取組みですね。病院との連携で、様々な可能性が広がりますね。

白澤先生 病院の先生がレシピの提供をすればよいのではないかとも思います。

廣常 そうですね。しかし現状は、病院の職員食堂でさえ店屋物(デリバリー)であったり、売店でも決して健康に良いものが置いてあるとはいえません。職員食堂や売店を含めて情報発信のプラットフォームであると考えるべきかもしれません。

白澤先生 そうですね。病院での健康に配慮した食事提供は、社会のインフラ整備と考えてもよいかもしれませんね。まずは医療関係者の意識改革、習慣性、また態度変容のためにも医療機関の職員の食事から改善する必要がありますね。病院の従業員が健康に関心を持ち、健康になることで、患者や社会にもすすめることが出来るようになり、それがひいては人々の健康へとつながりますから。院内から先ずは情報発信が大切です。
以前にも長野県飯山市の観光推進のお手伝いとして、飯山市内の旅館やペンションに対してアンチエイジングのレシピ指導を行いました。新産業文化創出研究所にもレシピ開発を行っていただきましたが、今では地域の飯山赤十字病院などの食事、運動、生きがいを重視したアンチエイジングシステムに拡がっています。これは、ヘルスツーリズムの一環で、市の宿泊施設のどこに泊まっても、旅行に来る人の健康志向に対応できるという、いわば社会インフラに飯山市が動きだした訳ですね。発展すると、食事制限のある患者やその家族も飯山市に来れば安心できる。また病院も対応してくれる。このことが地域の観光促進に結びつくようになります。

廣常 まさにその通りですね。病院から情報発信を行い、健康な人を増やしていくことが大切です。年々増え続ける医療費を削減することを考えても、先生の提唱されている未病、予病の考え方が切り離せませんね。
また、メニューをデジタル化することによって病院にとどまらず在宅患者へ配食するなど活用範囲が広がります。

白澤先生 本格的な活用にはまだ時間がかかりそうですね。様々な障壁を克服する必要があります。

廣常 そのような面もありますが、まずはできることから始めることも大切でしょう。啓蒙活動なども大切だと考えます。

白澤先生 そうですね。できることから始めながら、制度の整備も行っていく。つまり両輪として行っていくのが賢明ですね。

 

12月20日のセミナーに向けて


廣常 12月20日はケルククラブのセミナー講演をよろしくお願いいたします。医療関係、外食・中食・給食産業の方ほか様々な業種の方を交えて病院給食のあり方、今後の展開などを考える機会になればと考えています。今後ケルククラブで考えていくドクターズキッチン構想は、病院と食、メニュー開発から電子レシピ、レストランから在宅への配食までと、事業イメージは広いと思います。アンチエイジング食との連動も考えていければと考えています。

白澤先生 病院と連携したメニュー開発やその多角化は大切で、今後どんどん進展させるべきだと考えています。自分自身も学術的な立場から今後も応援していきたいと考えています。こちらこそ、よろしくお願いします。

 

ケルククラブ セミナー予告


<開催日> 12月20日(木)
<時 間> 13:30~15:30
<場 所> 大阪大学 中之島センター10F 佐治敬三メモリアルホール
<主な参加対象者>
医療・病院・福祉関係者   (経営層、管理栄養士、栄養士、調理師、医師他)
外食・中食産業関係者    (経営層、メニュ-開発者、シェフ、調理責任者他)
病院・学校・事業所給食関係者(管理栄養士、栄養士、調理師他)
その他フードサービス業界に関わる業務に従事されている方
<タイトル>
食とアンチエイジングのビジネスの活用について
『食とアンチエイジング』 ~求められるフードサービス産業でのアンチエイジング食

※本セミナーは、ドクターズキッチンをプロジェクトとして推進するための各種マッチング、医療機関等とのマッチング等を目的としたビジネスプラットフォームとして開催するものです。

経歴

白澤 卓二

順天堂大学大学院 医学研究科 加齢制御医学講座 教授。
日本抗加齢医学会 理事。 日本基礎老化学会 理事
1990年
千葉大学大学院医学研究科博士課程卒。
2000年
ノバルティス老年医学賞受賞。
2005年
東京都老人総合研究所 老化ゲノムバイオマーカー研究チーム研究部長。
(現在は協力研究員)
専門は寿命制御遺伝子の分子遺伝学、アルツハイマー病の分子生理学、 アスリート遺伝子の研究、アンチエイジングクッキング他多岐に渡りアンチエイジングのオピニオンリーダーとして活躍。

 

ダニエル・シガ氏(Daniela Shiga)

順天堂大学大学院 加齢制御医学講座 協力研究員
料理研究科(ジュースアレンジメント)
ライフスタイルデザイナー
オフィシャルサイト http://www.danielabeautifullife.com/

参考

順天堂大学 大学院医学研究科 加齢制御医学講座 〜 長寿遺伝子研究の白澤卓二 〜
http://www.shirasawa-acl.net/about/index.html

主な書籍

(URL http://www.shirasawa-acl.net/book/index.html)

PHP研究所
白澤 卓二さんの100歳まで「元気で若い人」の食事

徳間書店
100歳まで元気!病気にならない簡単5分の朝食ジュース

徳間書店
100歳まで心も体もさびない! 簡単5分の朝食スープ

文春新書(文芸春秋)
100歳までボケない101の方法 実践編 長寿者9人のアンチエイジング

小学館
100歳までキレイでいられる基礎知識101 今日から始める!美生活指南書

日本文芸社
糀の良さがぎゅっと詰まったマルコメの糀レシピ

など多数