お客さまの店選びが よりシビアになっている今、 “記憶に残る”工夫が大切です。-月刊「近代食堂」の編集長・亀高 斉さま

2011年12月15日

「震災による外食産業への影響は?」
「今、飲食店に必要なこととは?」
など、外食をめぐる“今”について、全国各地の飲食店を取材されている月刊「近代食堂」の編集長・亀高 斉さまにお話しいただいた。

好調な店とそうでない店の差が以前より拡がる傾向にあります。

いま飲食店を取材すると、「大震災の影響はあまり感じなくなったけれど、震災前から続いている消費低迷が厳しい」という話を聞きます。今年後半、年末に向けて何とか売上を挽回したいけれど、思ったほど外食消費が盛り上がっていない…と感じている経営者の方が多いようです。
そうした中で、好調な店とそうでない店との差が以前より拡がってきたように感じています。理由のひとつは、お客さまが「確実に満足できる店」を選ぶようになったからではないでしょうか。ここ数年、もともと節約志向だったお客さまの店選びがさらにシビアになった。「今日はこの店でいいや」ではなく、「外食するなら満足する店」ということで、より魅力のある店、実力のある店、お値打ち感のある店に集中するようになったのだとみています。

こうした状況のなか、トレンドとして注目されるのが「○○酒場」という業態。代表的なものとしては「ワイン酒場」や「肉酒場」「焼肉酒場」が挙げられます。東京では「ワイン酒場」「ワイン食堂」が急増していています。「ワイン酒場」や「肉酒場」は、大衆酒場的なカジュアルさとちゃんとした専門的な料理が融合されているという点が特徴といえます。

「ワイン酒場」であれば、単に安いだけでなく、ワイン初心者でもおいしく感じられるワインを上手に選んでいたり、本格的なビストロ料理が楽しめるというように、よく考えられています。ワインが進むパテや煮込み料理があり、しかも値段が手頃。すべてが激安ではありませんが、従来のワインレストランに比べるとかなり安く、3000~4000円前後で利用できる店が多いですね。普段、低価格な居酒屋を利用しているお客さまも「いつもの店では飽き足らない」「もう少しおいしいものを食べたい」という時に手が届きやすい店になっています。

もうひとつ、マーケットの広さも特徴的です。人気の「ワイン酒場」を見ると、20代のカップルから40代・50代まで客層は幅広い。若い人にとっては居酒屋より背伸びしたい時に使いやすく、一方ではもともとワインが好きな中高年がいます。
「肉酒場」にしても、若い人はもちろん肉が好きですし、今は肉食女子などといって女性でも肉が好きという人が多い。カジュアルさと専門性、プラス、マーケットの広さがブームを作るのだと思います。
経営的な視点からみると、これらの業態は「酒場」ですから席数はある。単価を落としても客数で売上を確保できる。超一等地ではなくて、駅は一等地であっても店は裏通りにあるとか、そんなところが多いようです。

また、メニューのトレンドというところでは、2010年は「食べるラー油」が大ブームでしたが、2011年は「バーニャカウダ」がブームだったのではないかと思っています。もとはイタリア料理ですが、今では普通の居酒屋でも出している店が多いですね。ベースにはここ10年来のヘルシー志向というものがあって、お客さまが喜ぶ野菜の素材感を、より演出しやすいのだ

これ! という成功法則を見つけにくい時代。諦めずに行動することが大切です。

1)「行動→検証→行動」を前向きに繰り返す。

今はお客さまのニーズは多様化し、経営環境もどんどん変わっていく時代。「こうすれば人が集まる!」という成功法則を見つけ出すのは、簡単ではありません。そうした中でもがんばっている店というのは、「行動→検証→行動→」の繰り返しを前向きに行っています。
 まずメニュー開発や販促などを行って、その結果を検証し、また行動する。何かをやれば必ず結果が得られるという時代ではないので、いろんなことを試し、うまくいかなくても前向きに学んで次に活かしているのです。
何も大がかりなことをするのではありません。DMひとつでもいい。あるラーメン屋さんは、店主自らが商品を手に持った写真でハガキサイズのDMを作りました。休日を利用して経営者やスタッフがポスティングを行い、他の販促との相乗効果で客数20%増という結果を出しています。確かに、インパクトのあるDMは「1回くらい行ってみよう」と思わせる何かがあるんですね。
おそらく今の形になるまで、あれこれ試行錯誤したことと思います。一度やってみてダメだったから「今はDMをやっても無理」と諦めるのではなく、「じゃあ、次は何を載せよう? 自分が出てみようか」と、そこまで行動するのが大切ではないでしょうか。

2)お客さまの記憶に残る店にする。

もう一つ大切なのは、お客さまの記憶に残る店にすること。わかりやすい例では、メニューの中に1つでも2つでもいいからインパクトのあるものを用意しておくのも手です。

例えば、「近代食堂」で取材した繁盛イタリアンの店には、シラスが“乗せ放題”のペペロンチーノがあります。大きな木箱に入れたシラスを客席まで運び、お客さまがストップをかけるまでペペロンチーノのパスタの上にシラスを乗せてくれる。このメニューのいい点はありそうでなかったということと、実際においしい。そして、乗せ放題というインパクトです。
また、客席でイクラを山のように盛るイクラ丼もあります。お客さまの目の前で、「よいしょ、よいしょ」という掛け声とともに受け皿にこぼれるほどイクラを盛っていくのです。
お値打ち感をどう打ち出すかですが、ただプラスすればよいというものではありません。プラスするものが一つずつおいしく新しさがないと、お客さまは納得しません。

どちらも、ある程度原価がかかりますが、集客のためのメニューなんですね。記憶に残るし、人にも伝えたくなります。今はブログやツイッターでの口コミの影響が大きいので、記憶に残って誰かに伝えたくなるメニューがあると店の宣伝にもつながります。多少原価がかかっても効果の方が大きくなるケースがあります。
お客さまの店選びがよりシビアになっているとお話しましたが、慎重に選ぶということはその分ちゃんと見ているということ。「どの店がいいのか」とネットなどで口コミを精査して、選んでいるのです。がんばれば、がんばった分だけ、お客さまは見てくれています。

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食と料理に関する専門出版社。昭和44(1969)年創刊の月刊誌「近代食堂」をはじめ、月刊「カフェ&レストラン」、さまざまなジャンルの料理関係書、飲食店の開店・サービスについての専門書などを出版。iPhoneで読める電子書籍の発売やブログでの活動も行っている。
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